突貫スタン調整録

多元宇宙の皆さん、お久しぶりです。卯月です。
当サイト久々の投稿となりましたが、今回はSekappy COLOSSEUMというMTG Arena上の大会において、私が調整したデッキで当サークル員の村山が7-0-2の成績で二次予選を突破しましたので、その調整録などを書き残しておきます。なお、皆さんが一番気になるであろうサイドボードガイドや珍しい採用カードの採用理由は終盤に纏めて記すので時間のない方はそちらまでどうぞ。

こちらが、今回調整したデッキリストです。

デッキタイプはラクドスミッドレンジで、現環境では馴染みのあるものだと思いますが、このデッキタイプは環境デッキには珍しく、定型とされるリストがほぼ存在しません。以下では時系列的にこのリストの変遷を説明していきます。

§1 借り物のデッキ

実を言うと、京大MTGサークルのメンバーは紙でのプレイを好んでいるということもあり、ここ最近のArena上の競技的な大会は参加していませんでした。そんな中、私の気まぐれで日本選手権に出場しようと思い、村山を調整に誘ったことが今回のことの始まりになります。
時期は《創造の座、オムナス》の禁止後になるので日本選手権のウィークリー予選も残すところ一週しかありませんでした。そんなとき頼りになるのはやはり他人のデッキです。幸い当時は環境の変革期であり、また『ゼンディカーの夜明け』リーグ・ウィークエンドなどのレベルの高い大会が行われたため、練度の差や情報の入手に苦しむことは、あまりありませんでした。
まず初めに現環境を理解するうえで参考にさせてもらったのが、原根健太の徹底解説!スタンダード・アナライズでした。当記事では混沌とする《創造の座、オムナス》禁止後のスタンダードの現状が非常に分かりやすく解説されており、とにかく時間がなかった私には非常に大きな助けとなりました。
上記記事でも紹介されていますが、カードプールが最も小さい上に、大量の禁止が出て多くのギミックが弱体化されている現スタンダードにおいて、私が単純なカードパワーが高いと感じていたのは《ぬかるみのトリトン》《ティマレット、死者を呼び出す》《死の飢えのタイタン、クロクサ》の赤黒脱出の並びです。
そんななか行われた『ゼンディカーの夜明け』リーグ・ウィークエンドではディミーアローグデッキが最多とかなり偏ったメタゲームとなっており、そのディミーアローグに有利であるラクドスミッドレンジの活躍は結果を待つまでもなく明らかでした。参加者のデッキリストが公開されたのは日本時間で土曜の朝方だったため、当日のウィークリー予選では当メタゲームは反映されないだろうと感じ、1日待って日曜の予選でPaulo Vitor・Damo da Rosa選手やMike Sigrist選手のリストを好みとメタゲームに合わせて少し改変したものを持ち込み、思惑通りディミーアローグに複数マッチし無事権利を獲得しました。
しかし、終わってみれば『ゼンディカーの夜明け』リーグ・ウィークエンドは単にローグデッキを持ち上げたものではなく、現環境を規定するあのデッキも生み出しました……皆さんご存じのグルールアドベンチャーです。

ウィークリー予選突破リスト。メインボードは良いものの、サイドの粗さが目立つ。

§2王者との闘い

佐藤レイ選手をはじめとし、複数の日本人選手が使用し、圧倒的なパフォーマンスを見せたグルールアドベンチャーは国内では爆発的な流行を見せました。当の私は日本選手権までの一週間をラストチャンストライアルやSekappyCOLOSSEUM予選の結果を注視していましたが、グルールアドベンチャーの使用率は40%を超える勢いであり、到底無視できるものではありませんでした。そこで日本選手権までの数日は村山とラクドスミッドレンジとグルールアドベンチャーのマッチアップをひたすらに繰り返しました。一週間で数十マッチはこなしたと思います。余談ですが、今回初めて大会参加で利用したMTGMeleeは参加者のデッキリストはおろか、メタゲームや勝率までも自動で算出してくれるサイトで、情報収集に非常に助かりました。
結果、当初のリストとはサイドボードの面で大きな変化をもたらし(詳しくはサイドボードの項目にて)、当マッチアップは、若干の有利と判断するに至りました。そこで日本選手権本番でもラクドスミッドレンジを使用することに。
日本選手権参加のリストは以下の通りです。

このあたりからリストが固まり、ある程度納得のいくものに

結果は5-2で初日を抜けたものの、二日目で早々に2敗しドロップ…
敗因はArenaでの大会の経験不足による持ち時間配分のミスによるものや、有利であると信じ込んでいたディミーアローグへの対応不足、あまり想定していなかったランプとのマッチなど多くの課題を与えてくれました。
また、課題は残ったものの、当初最も意識していた対グルールアドベンチャーに対しては想定通りの勝利を重ねることができていたのは不幸中の幸いでした。
なお、村山は日本選手権本戦に予定がつかなかったため欠場。つまり彼には出場もしない大会のために一週間グルールアドベンチャーとのマッチアップに付き合ってもらいました。彼には最上の感謝を。

§3ひしめきあうTier2

当初の目標である日本選手権は残念な結果に終わってしまいましたが、幸いなことに同時期にSekappyCOLOSSEUMが行われるということで、今度はそちらへと意識を向けることに。しかし、SekappyCOLOSSEUM二次予選までは二週間以上あり、飽きっぽい我々は少々熱が冷めてしまっていたことも事実です。私は日々のデイリー予選に可能な限り参加する方法でラクドスミッドレンジの感触を確かめ7回参加中4回権利獲得水準(権利獲得水準は4-1以上)を満たすなど、上々の感触を得ていたのですが、村山に関しては完全にモチベーションを失っており、Bye獲得すらもままならない状態でした。
そんな中『ゼンディカーの夜明け』リーグ・ウィークエンド二週目が行われます。グルールアドベンチャーに対する明確な回答を見つけられていなかった現環境に一石を投じるものが期待されましたが、メタゲームではグルールアドベンチャーが圧倒する結果に。おそらく対グルールを意識しての使用と思われるエスパースタックスや緑単フードの存在は目立ちましたが、そこまでの結果は残せませんでした。
私個人が注目したのは日本人で最も良い成績を残した石村信太朗選手のティムールランプです。思い返せば石村選手は前回のリーグ・ウィークエンドでも独自の赤黒のランプデッキを使用し、上位の成績を残しており、現環境でのランプ戦術、ひいては《砕骨の巨人》と《精霊龍、ウギン》を使用したデッキが強力であると示しています。
そこで私は今までほとんど手を加えていなかったメインボードにおいて《義賊》を《苦悶の悔恨》に入れ替える決断をします。《義賊》はどのデッキに対しても一定の活躍が見込める、まさにメインボード向けのカードでしたが、逆にサイドボードにおいてはデッキの根幹である脱出ギミックに関与していないこともあり、抜けることが多いカードでした。特に《砕骨の巨人》の格好の的ということを考え、対グルールアドベンチャーとして台頭し始めているミッドレンジ以降のデッキにクリティカルなカードであり、既存のデッキに対しても一定の役割がある《苦悶の悔恨》をサイドボードから繰り上げる形で登用しました。
そうこうしている間に迫りくるSekappyCOLOSSEUM二次予選にむけて私はラクドスミッドレンジの使用を決意し、完全にモチベーションを失っていた村山もそのデッキに乗っかることに。
冒頭にも載せましたが、以下がSekappyCOLOSSEUM二次予選で両名が使用したデッキです。

最終的なリスト。思い残すところもありません。

結果

村山
R1 青黒カニローグ 〇×〇
R2 赤緑アドベンチャー ○○
R3 青黒ザレスローグ 〇×〇
R4 青黒ザレスローグ ×〇〇
R5 赤緑アドベンチャー ×〇〇
R6 赤緑アドベンチャー 〇×〇
R7 青黒カニローグ ○○
R8 ID
R9 ID
の以上、7-0-2で二次予選を7位通過、決勝大会進出。

感想
14日間毎日開催されていた一次予選の通過デッキリストを見て、多いことは予想はしていましたが、二次予選という大会はローグとアドベンチャーにしか当たらない大会でした。そのため、事前にデッキ作成者の卯月から聞いたゲームプランを完走することに注力した一日でした。デッキが強かった、の一言に尽きます。この場をお借りして改めて御礼申し上げます。このデッキの練習量がないのでデッキの詳細は卯月に任せますが、個人的に強く思ったことはこのデッキはリスト公開制の大会用に組まれている、ということでした。ハンデスと除去がメインに入っているので、相手のアーキタイプに合わせてキープ基準を変えられる。これがこのデッキの強みだな、と感じましたね。決勝大会が終わったらまた書くのでしょうし、今回はこの辺で。(村山)

なお、卯月は6-3でした。

§サイドボード

ここでは、いるかはわかりませんが、このリストを使ってみたいという方に向けてサイドボード各種についての採用理由と主なデッキに対してのサイドボーディングガイドを記していきます。

  • 《強迫》《苦悶の悔恨》
    《強迫》はサイドから《苦悶の悔恨》の枠が抜けたので追加で採用。主に入れる相手はディミーアローグとエスパースタックス、ランプデッキ。ハンデスを取りすぎだと思われるかもしれませんが、環境にラクドスミッドレンジが減っているため墓地対策がほぼありません。そのためハンデスを繰り返しトップ勝負に持ち込めばそのうち引いてくる脱出クリーチャーや《ロークスワイン城》で勝てます。
  • 《魂標ランタン》《塵へのしがみつき》
    上記でラクドスミッドレンジが減っていると言っておいて合計三枚の採用は道理が通らないと思われるかもしれません。(私自身も少し過剰だと感じています。)ただ、同型とのマッチアップはこれらの墓地対策が引けるかどうかの勝負になりやすく、勝敗に直結するため採用しています。また、ディミーアローグすサイドに取っている、《スカイクレイブの影》による継続的なアグロプランはこのデッキの明確な負け筋であるためディミーアローグに対しても若干サイドインします。
  • 《スカイクレイブの影》
    主にディミーアローグに対しての追加のクロックとして採用しています。対ディミーアローグでは脱出クリーチャーが勝手に墓地に落ちるので、十分な土地がある手札をキープするだけでも有利に立ち回れます。そんな身の少ない手札のバリューを上げることにも一役買っています。
  • 《峰の恐怖》
    散々繰り返したグルールアドベンチャー戦の結果行きついた答えの一つ。
    そこまで有効ではない《アゴナスの雄牛》のマナカーブを埋めつつ、飛行かつタフネス4とグルールアドベンチャー側が非常に対処が困難なクリーチャー。《漁る軟泥》や《運命の神、クローティス》に睨まれて使いにくい手札の《死の飢えのタイタン、クロクサ》に大きな役割を与えることもできる。
  • 《悪意に満ちた者、ケアヴェク》
    グルールアドベンチャー戦の答えその2。
    このカードはグルールアドベンチャー側のサイドチェンジを誘導する役割で採用している、所謂見せサイドです。私が考えるにグルールアドベンチャー側のサイドボードプランは入れ替えを最小限に抑えてアグロプランを維持するものと、《山火事の精霊》を抜き三点火力やプレインズウォーカーを入れてミッドレンジに切り替えるプランがあります。このケアヴェクはまさに《山火事の精霊》にクリティカルなカードであり、かつ《エッジウォールの亭主》や《恋煩いの野獣》へのけん制にもなるため、一枚ではありますが、相手のサイドボードへの意識を乱すのには十分だと感じています。なお、グルールアドベンチャー側をミッドレンジプランにサイドチェンジさせることの利点ですが、こちらの《ティマレット、死者を呼び出す》や各種アドベンチャークリーチャーのバリューを引き出すことにあります。こちらのデッキの方がマナや時間はかかるが、一対多交換が行えるカードが多く入っているため、相手の《グレートヘンジ》と各種プレインズウォーカーだけに注意していれば長期戦になった際に有利にゲームを運べます。
  • 《夜鷲のあさり屋》
    こちらも一番の役割は、グルールアドベンチャーに一枚でも多く三点火力をサイドインさせることにある、見せサイドです。稀に見る赤単などにも有効なサイドボードですが、基本的には除去にめっぽう弱いクリーチャーなので過信はできません。
  • 《取り除き》《壮大な破滅》
    追加の除去として採用しています。メインの《無情な行動》と散らしているのは、それぞれ、《取り除き》は《漁る軟泥》に強く、《壮大な破滅》は緑単フードの破壊耐性があるクリーチャーに強くなっています。

最後に軽いサイドボードガイドを残しておきます。

  • 対グルールアドベンチャー
    In 《峰の恐怖》2《悪意に満ちた者、ケアヴェク》1《夜鷲のあさり屋》1
    《取り除き》1《壮大な破滅》1
    Out 《アゴナスの牡牛》2《死者を目覚めさせる者、リリアナ》1
    《苦悶の悔恨》1《ぬかるみのトリトン》2
    最も練習したマッチアップなので一番自信がある項目です。上記の対グルールサイドボードに加え、除去を追加します。《苦悶の悔恨》を残し《ぬかるみのトリトン》を減らすことに違和感を感じる方も多いと思います。《苦悶の悔恨》は相手の《アクロス戦争》と《運命の神、クローティス》がこのデッキでは本当にどうしようもないため仕方なく残しています。この甘えとも言えるハンデス残しも前述の相手のサイド後のミッドレンジ化を期待してのチェンジです。《ぬかるみのトリトン》減らしは相手の《砕骨の巨人》を強く使わせないためです。
  • 対ディミーアローグ(カニ)
    In《強迫》3《スカイクレイブの影》2《塵へのしがみつき》1《取り除き》1《苦悶の悔恨》1
    Out《ティマレット、死者を呼ぶ》4《死者を目覚めさせる者、リリアナ》1《ぬかるみのトリトン》2《残忍な騎士》1
    調整初期から有利と信じて疑わなかったマッチアップですが、意外と負けます。気を引き締めてかかりましょう。主な争点となるのは《ティマレット、死者を呼ぶ》と《ぬかるみのトリトン》の減らし方になると思います。すべて抜き切るのも一つの手ですが、私はそうしていた時に相手の怒濤のクリーチャー連打で押しつぶされることが多々あったため、ライフ回復手段と最低限のブロッカーとして《ぬかるみのトリトン》は少し残すようにしています。
  • 対ディミーアローグ(ザレスサン)
    プレイヤーによってリストが大きく異なるデッキタイプのため決め打ったサイドチェンジは用意していません。カニタイプよりは厳しい戦いを強いられることになりますが、《夢の巣のルールス》が相棒にいない相手のため、ハンデスと除去を駆使してロングゲームに持ち込むことを意識し、相手の墓地対策の減少を心の糧に頑張りましょう。
  • 対ヨーリオン
    In《強迫》3《苦悶の悔恨》1《スカイクレイブの影》2
    Out《血の長の渇き》4《棘平原の危険》2
    いろんなカラータイプがあるデッキですが、これもまた墓地対策が薄い分若干の有利程度に考えています。《棘平原の危険》についてですが、抜いてしまっても土地は25枚入っているので遠慮なく抜いてしまいましょう。

    と、ここまで主要なデッキに対しての簡単なサイドボードガイドを記しましたが、私は決まりきったサイドチェンジをすることに強い抵抗感を持っている人間です。あまり参考にしすぎることなく、相手のデッキリストや自分のプレイに合わせた最良のサイドボードを皆さんぜひ見つけてみてください。
    最後までご清覧ありがとうございました。来週末にはSekappy COLOSSEUMの本戦が行われますので、お時間のある方は是非、うちの村山を応援して下さると幸いです。
    これからも我々京大MTGサークルをよろしくお願いします!

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