執筆者の紹介
村山:しがない理系学生。弱いカードを強く使うことよりも強いカードを弱く使うことを得意としている。なんでこんな記事を書いているかというと、旧枠モダンを布教したら、よくわかんないから書いておいて、となったわけである。次回があるかは、本稿の評判次第。
0.はじめに
注意:この「10分でわかる! 旧枠モダン」は必ず10分でわかることを保証してはいません。足りない場合は《時間の伸長》を行ってください。
みなさんこんにちは。今回は旧枠モダンの話をしようと思います。旧枠モダンと聞いて察しの良い皆さんならどのようなフォーマットかお気づきになられるでしょう。もちろんもともとご存じの方もいらっしゃるかもしれません。本稿は全く知らない方に向けての記事ですのでそうした方には多少悠長かもしれませんが、確認の意味も込めてお付き合いください。
目次
0.はじめに
1.旧枠モダンとは
2.旧枠モダンの魅力
3.旧枠モダンの代表的なカード
4.サンプルデッキ
5.おわりに
1.旧枠モダンとは
さっそく、この「旧枠モダン」というフォーマットについて説明しようと思います。マジックのフォーマットを理解する上で必要不可欠なのはカードプールですよね。スタンダードなら最新2年間のエキスパンションですし、パイオニアなら『ラヴニカへの回帰』以降の通常エキスパンションですよね。さて、この旧枠モダンはその名の通り、モダンで使用可能なカードが使えます。ただし、旧枠で刷られたものに限る、というものです。馴染みのない人のために旧枠、枠の説明をしましょう。
マジックのカードは昔と今ではカードの表側の印刷部分が変わっています。下の3つの《ラノワールのエルフ》を見てみてください。
どれもイラストは違えど《ラノワールのエルフ》です。しかしながら、枠の部分、わかりやすく言うとイラストレーターの部分はどれも違いますよね。この枠をそれぞれ旧枠、新枠、新新枠といいます。旧枠は『スカージ』まで、新枠は『第8版』から『ニクスへの旅』まで、新新枠は『基本セット2015』から現在の新セット『イコリア:巨獣の棲処』に至るまで使われています。
さて、モダンはというと『第8版』以降のカードが使えるフォーマットですよね。これはちょうど新枠以降のカードというわけなんです。では旧枠ではないじゃないか、となりますが、旧枠のカードの再録と新枠の新規カードの2種類でモダンのカードプールは形成されているわけです。上の《ラノワールのエルフ》はまさしく旧枠のカードの再録ですよね。この旧枠のカードの再録が旧枠モダンで使えるカードなのです。ちなみに、先に挙げた《時間の伸長》も使えますよ。
これで旧枠モダンが組めるぞ、と意気込んでもらっても構わないのですが、ちょっと注意が必要です。それは禁止カードの存在です。旧枠モダンの禁止カードは通常のモダンの禁止カードに準拠しています。今まで意識したことがないとわからないかもしれませんが、通常のモダンの禁止カードの中に旧枠生まれのものがあるんですよね。
ということで《花盛りの夏》は禁止カードです。あとは、先には詳しく述べていないのですが、正しい旧枠モダンのカードプールは初版が旧枠であるモダンプールのカード、別の言い方をすると、フォイルでない旧枠が存在するモダンプールのカード、なんですよね。どうしてこんな回りくどい言い方をするのか。それは、「新枠のカードが初版だが、のちに旧枠フォイルとして刷られたカード」が存在するからです。そんななぞなぞみたいなカードは、こちら。
上の5枚は使えません。はい、もうこれで完璧です。これでもうデッキ組めます。はい、では組んでみましょう。というものの、こんなのカードプール把握しただけで実際には組みにくいかもしれません。なんでもカード知っているマンなら大丈夫でしょうが、そうでないとモダンのカードを検索エンジンに入れてこのカードの初版はどこかを探さないといけないのでしょうか。
そんなことをしたくない、そんなあなたのために。ここだけのワザップとして、Scryfallというサイトを教えておきましょう。これはマジックのカード検索サイトなのですが、下の秘密の暗号を入れると旧枠モダンのカードプールが画像付きで出てきます。
f:modern is:old is:nonfoil
実際にはここに飛びます
良かったら活用してみてください。
2.旧枠モダンの魅力
では、個人的にはなりますが、このフォーマットの魅力を少々語らせていただきます。このフォーマットは競技マジックではなく、いわゆるカジュアルフォーマットに属しています。そんなカジュアルフォーマットの中でもかなりの良いバランスを保ったフォーマットだと思いますね。勝手な感覚としてはEDHに近いものを感じます。
というのも、このフォーマットは「自分の好きを体現」でき、かつ「渋い」んですよね。その2つはEDHも持っていますもんね。「自分の好きなジェネラル」を使えて、「EDHでしか見ないけど効果的なカード」を採用する。近いものを感じませんか?
一つずつ触れていくと、自分は過去の公式記事やMTGWikiのような情報サイトで昔のアーキタイプやカードを見たり調べたりするのが好きなんですよね。それは自分がTCGに対してデッキを作ることに魅力を感じており、そうした中で過去のアーキタイプを参照することがよくあるわけです。そんな名カードを使えるフォーマットというとレガシーやヴィンテージがありますが、そこまで行くとお高いことが多いですしあまりに特異なカードが多いためピンと来ないんですよね。その点モダンはやっているフォーマットでもあり、勝手がわかるのはありましたね。実際にはこちらもかなり特異なカードだらけでしたが。そうした名カードが使える、なおかつ一線級である、というのはこのフォーマットをやる動機になりました。なにせ、《セラの天使》はこのフォーマットではかなりのパワーカードですからね。
あとは「渋さ」ですが、これは2種類の意味がありますね。まずはそのイラストや雰囲気。これが好みで形から入ったといっても過言ではないですね。75枚揃えて初手に来た時の幸福感たるや。あとはカードバランスですね。クリーチャーが弱く、スペルが強い。でもそのバランスはモダンというフィルターで良い案配になっているんです。弱すぎず、強すぎず。カラーパイも守られています。当然友好色の土地のほうが対抗色の土地より種類が多く、強いです。
特筆すべきはプレインズウォーカーの不在ですかね。ライフ20を0にするためにクリーチャーを入れるというよりかは、相手のプレインズウォーカーを効率よく倒すためにクリーチャーを入れる、そのくらい近年のプレインズウォーカーのゲーム制圧力は高くなっています。それが今後も絶対増えることないのでプレインズウォーカーに疲れた人にもおすすめかもしれません。
こんなところで自分の話はおしまい。ちょっとでも魅力が伝わったのなら嬉しいけど、実際にどんなカードがあるかを一緒に見てみましょうか。
3.旧枠モダンの代表的なカード
一線級のカードを各色見ていきます。琴線に触れるカードがあれば嬉しいです。
3.1 白
白のクリーチャーといえば天使ですよね。《セラの天使》のほかにも《万物の声》や《怒りの天使、アクローマ》がいますね。アクローマには《蘇生》を合わせましょうか。
白のスペルといえばやはり《神の怒り》。他にも。
白のサイドといえば、そうです。防御円ですよね。
最初は長めにやりましたが、あとはテンポ良くいきますよ。
3.2 青
青といえばスペルの色。スペルといえばカウンター。良いの揃ってますよ。
ドローがしたいなら、はいどうぞ。
3.3 黒
黒といえば除去にハンデス。はい用意しました。
往年の黒の名クリーチャーはこちら。
3.4 赤
赤といえばこいつらよ。
3.5 緑
緑といえばマナクリーチャーですよね。
殴るクリーチャーはこんな感じでしょう。
3.6 多色
多色は24種類と少ないものの強いものばかり。
3.7 茶色
ここではあえて茶色とさせていただきます。今では無色ですが、当時は茶枠ですので。
3.8 土地
とうとう最後ですね。マジックの重要なシステムである土地です。旧枠モダンの特徴として、基本土地タイプを複数種類持つ土地は存在しません。《蒸気孔》のようなショックランドは『ラヴニカ:ギルドの都』初出です。当然《Volcanic Island》のようなデュアルランドはモダンにないので旧枠モダンにもありません。それを踏まえてみてください。
3.9 一言アドバイス
こうして色々見てきましたが、実際やらないとわかりにくいところをまとめておきますので参考までに。
- 黒は除去耐性・・・黒いクリーチャーは他を《恐怖》させる存在なので、《恐怖》に恐れ慄きません。実際黒で除去ろうと思うと軽いのは《燻し》くらいしかありません。
- 除去の基準はミシュラランド・・・ミシュラランドに触れるか、これが除去の採用基準の大きな部分を占めます。そのためインスタントの比重・再生不可の比重が高いです。
- 《解呪》はメインでも・・・メタ次第ですが、基本的には当てどころには困らないです。《聖なるメサ》や《未来予知》のように残したら負けに直結するものも多いです。
- ウルザランドは引きが勝負・・・《探検の地図》や《森の占術》はありません。ズルしないで引いてください。
- 墓地対策は基本的にない・・・《起源》のような墓地リソースデッキはあるものの墓地対策カードで有効なのは《トーモッドの墓所》くらいしかないです。
- フェッチよりもタップイン・・・フェッチランドでは基本土地しか持ってこれず、そこまでテンポ良く動くことも少ないので、色確保はタップインランドのほうが優秀です。
- カードに困ったら・・・入れるカードに困ったら、『時のらせん ― タイムシフト枠』と『モダンホライゾン』のカードがおすすめです。カードパワーが高いことが多いので。
4.サンプルデッキ
こんなにいろいろ書いているけど、お前はどんなデッキ握っているんだ、という人のために、ご紹介します。
ナヤ・スレッショルド
デッキリスト
60 メイン/main
2 極楽鳥/Birds of Paradise
3 ぶどう棚/Vine Trellis
3 荊景学院の戦闘魔道士/Thornscape Battlemage
1 なだれ乗り/Avalanche Riders
4 秘教の処罰者/Mystic Enforcer
2 セラの天使/Serra Angel
2 起源/Genesis
1 クローサの大牙獣/Krosan Tusker
2 稲妻/Lightning Blot
2 炎の稲妻/Firebolt
1 精神石/MInd Stone
2 不屈の自然/Rampant Growth
4 根囲い/Mulch
4 獣群の呼び声/Call of the Herd
4 焦熱の裁き/Fiery Justice
4 シヴのオアシス/Shivan Oasis
4 エルフェイムの宮殿/Elfhame Palace
2 近づきがたい監視塔/Forbidding Watchtower
2 樹上の村/Treetop Village
1 ギトゥの宿営地/Ghitu Encampment
1 忘れられた洞窟/Forgotten Cave
3 平地/Plains
3 山/Mountain
3 森/Forest
15 サイドボード/Sideboard
2 消去/Erase
2 神の怒り/Wrath of God
1 翼の破片/Wing Shards
1 新たな信仰/Renewed Faith
2 赤の防御円/Circle of Protection: Red
4 リバー・ボア/River Boa
1 炎の稲妻/Firebolt
1 なだれ乗り/Avalanche Riders
1 荊景学院の戦闘魔道士/Thornscape Battlemage
コメント:デッキは緑主体の緑赤白の3色。この色の強みはやはり《焦熱の裁き》の存在でしょう。また、『モダンホライゾン』で《起源》を獲得したので、《根囲い》でそれが活きるような構築になっているかと。墓地対策が少ないことから、先の《起源》に加え《秘教の処罰者》《炎の稲妻》《獣群の呼び声》が墓地に関連したカードですね。《荊景学院の戦闘魔道士》は旧モの《コラガンの命令》です。
シミック・フラッシュ
デッキリスト
60 メイン/main
4 クウィリーオンのドライアド/Quirion Dryad
4 神秘の蛇/Mystic Snake
1 起源/Genesis
4 手練/Sleight of Hand
4 選択/Opt
4 マナ漏出/Mana Leak
4 ブーメラン/Boomerang
4 巻き直し/Rewind
4 嘘か真か/Fact or Fiction
3 除外/Exclude
4 ヤヴィマヤの沿岸/Yavimaya Coast
4 フェアリーの集会所/Faerie Conclave
4 樹上の村/Treetop Village
8 島/Island
4 森/Forest
15 サイドボード/Sideboard
4 無効/Annul
4 反論/Gainsay
2 好機/Opportunity
2 未来予知/Future Sight
1 まごつき/Discombobulate
2 氷の干渉器/Icy Manipulate
コメント:サイドボードは適当ながら、メインの完成度は群を抜いています。『モダンホライゾン』は《起源》《嘘か真か》《除外》《未来予知》と多大な影響を与えています。特にこのデッキは《嘘か真か》が打ちたくて組んだのですが、フリースペルの《巻き直し》との相性は抜群ですね。はっきり言ってズルです。ですが、このゲーム、こういうズルしているときが一番気持ち良いんですよね。
5.おわりに
どうでしたか? 実際に75枚旧枠で揃っているのはかなり幸福指数が高いです。もちろん、必ず旧枠で揃えないといけないわけではありません。旧枠モダンのデッキを新新枠で揃えている知り合いを知っていますから。まあ、それは極端な例としても、少しでも興味持った方はカードプールを眺めたりプロキシでも良いので組んだりしてみてください。きっとこの数奇なフォーマットを好きになるはずです。《モグの狂信者》が《極楽鳥》を撃ち落とし、心がないために《恐怖》しない《トリスケリオン》も《神の怒り》には慄く。そんなフォーマットに少しでも《好奇心》を抱いてもらえたら幸いです。
返信がありません